辺口芳典 Yoshinori Henguchi

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にじみ出ている

両腕で包むように
父親を抱きしめた。
父親の命は父親の体から
はみ出して床に落ちた。
父親の命はロールパンみたいだった。
いつだってロールパンみたいな命だった。
「行方不明のトマトを、
リムジンに乗ったタマネギが見つけたんだぞ」
命の はがれ落ちた父親の体が そう言った。
むき出しになった父親の命は疾走する。
疾走する父親の命は自らブレーキをかけ、
火花を散らしながらストップした。
ふくよかな火花を散らしながらストップした。
気持ちのいい夕方みたいな火花だと思った。
命の はがれ落ちた父親の体から体温を感じる。
「惑星は やけに丸いな」 父親の体は そう言った。

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