辺口芳典 Yoshinori Henguchi

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夜の種

雪が降って、俺は雪に埋もれて、
世界の匂いがした。
二歳の俺がペンを走らせる音が聞こえた。
俺はかつて二歳だった。
青春という名前の老人が
二歳の俺を抱きしめて歩いていた。
「あなたと出会えたことが、一番のしあわせだった」と
青春さんは言った。
「胸が締めつけられるけど、
胸が締めつけられたままではいられないから」
この世の中心に青春さんは立ち止まって、
青春さんの首筋から、世界の匂いがした。
青春さんの耳の穴からは、
二歳の俺がペンを走らせている音が聞こえた。
「すべては生きるために」「しあわせを恐れない気持ち」
二歳の俺がペンを走らせて書いた言葉と、言葉の匂いが世界。

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