そうしたいから、そうする
どしゃぶりのなか、
チャーミングでずるいパーカッション奏者は、
細部まで、息づかいが、
居心地のいい恋愛小説のようだった。
パーカッション奏者が息を吐くと、
わたしも息を吐いていて、
まわりの植物が、わたしたちの息をそっと吸い込んだ。
パーカッション奏者はたくさんの息づかいを、
細部まで、画用紙に記入して、
寝ても覚めても、その指の関節も首筋も、
息づかいに変えて、パーカッション奏者の息づかいは、
すべてのがっかりを抱きかかえて、隣の部屋へ連れていく。
「たくさんの手紙を書いたよ」「行かないで」「またいつか」
「うん、たぶん」「そして、眠るまえにも手紙を書いた」「何もできない」
「口から出まかせ」「きれいな岩、きれいな雨」「地形、気候、人口、再会」
「再会した人たち」「寂しかった思いが少し終わった」「抱き合う瞬間」
「わたしたちはそんなに話すことがない」
「じれったいような物語を手渡し合って」「実感したよ」
「後戻りできないところに、わたしたちはいて」
「もっと目いっぱい、わたしたちは再会することになる」
「まわりの植物は息を吐き出していて」「わたしたちがその息をそっと吸い込んだ」