ようこそ、生かされて
夜の友だちが働いている。
飼い猫の似顔絵を描いている。
自分の奥さんのことや
350㎖の缶ビールを誇らしく思ったりしている。
かすかに。
「咲き誇るだけが花じゃない」
「小さな畑を耕し続けた人の手のひらも花だ」
「何でもない」「何もない」
「何の用だ?」「そこで何している?」
夜の友だちが働いている。
飼い猫の似顔絵を描き終えると、
夜の友だちは夜の街に出かけた。
夜の友だちが この街を一人で歩いた。たしかに。
夜の街には葉っぱがあって、枝があった。
コンクリートがあって、風があった。
夜の友だちが風の中を思い切り走った。たしかに。
風の中、
夜の友だちが この街でゆっくりと、とてもゆっくり、
生きることを選んで、そして生きている。ほのかに。