辺口芳典 Yoshinori Henguchi

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溶けたアイスクリームを大音量で聞かせて

「無駄のような、きらびやかな、
ちぢれた脳細胞のオレの妻になってよ」
紙くずみたいな男の声が始まる。

「無数に口を開いて、骨まで愛して、
許されないまま、
信頼とタワゴトを組み立てていきましょう」
アイスクリームみたいな下着の女の声には、
孤独な怪物が夜中の砂浜で
ひっそりゴミ拾いしているような味わいがあった。
 
この味を知ったら、
この味を知る以前にはもう戻れないということを
ちぢれた脳細胞の男は知っている。
 
「あなたの右手はタコの記憶でできていて、
左手はもちろんイカの記憶で、
左手の中指だけが白鳥の記憶でできていますよ」
アイスクリームみたいな下着の女の声が、
アイスクリームみたいに溶けて、雪に変わった。

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