押し入れの中に イカスミが浮かんでいる。 結果的に父が最も愛したのは 植物人間となって口をきかなくなった母だった というストーリーは 私を驚かせてくれる。 父と母の間を「何か」が走り抜ける。 父と母の間を走り抜ける「何か」の正体がイカスミであることを 私は知っている。 父と母の間を走り抜けたイカスミが 押し入れの中に帰っていくのを眺めていた。 押し入れの中にイカスミが浮かんでいることを 私は知っている。