素朴な約束
真夜中の半分は個体で、
もう半分は液体だった。
個体と液体が衝突して、
気体が産声をあげる。
少し汗ばんでいる素肌に向けて
産声をあげる。
砂浜の砂の その感触に向けて産声をあげる。
産声が笑っている。
産声の半分が個体になって、もう半分は液体になった。
産声は桃色で、桃色が回転していた。
猛スピードで回転していた。
新しくも古くもない、それは ただ生々しい。
誰かの手のひらの上で、猛スピードの回転は、
今ではもう スローモーションになっていた。
誰かの手のひらの上で、いつかの真夏の日に、
命だけを頼りに、スニーカーをつっかけて
僕たちは出かけて行く。
スニーカーをつっかけて僕たちは出かける。
それが すべての姿なのかもしれない。