共に働いて、共に旅をする
水に濡れた女が道路に横たわっていた。
裸の女が泡だらけで道路に横たわっていた。
ノートパソコンが強風に飛ばされていた。
尽きることなく、ノートパソコンが強風に飛ばされていた。
建築家と花屋さんが話し合っていた。
水に濡れることなく話し合っていた。
泡だらけで道路に横たわることなく、強風に飛ばされることなく、
建築家と花屋さんが話し合っていた。
建物の歴史や街の変化の話から始まり、
冒険心や審美眼について、空や海を思わせる青色について、
大地の裂け目について、人を引きつける彫刻の機能性について、
吸い込まれてしまいそうな黒い瞳について、
木でできたものとか、錆びたものとか、深海魚について、
建築家と花屋さんが話し合っていた。
建築家と花屋さんの足の下に波が打ち寄せる。
色気と清潔感を合わせ持った稲妻が走った。
世界中の窓ガラスが音を立てることなく割れた。
貝殻の中身が貝殻から抜け出して街を歩いた。
懐かしい足音を聴いて、建築家と花屋さんは涙を一粒ずつ落とした。
涙が地面に落ちると、ガラスの割れる音がした。