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もう何かが止まらないんだ。
あなたは何を求めて ここへやって来るんだと思う?
きれいな色のカプセルを ぬるま湯に入れると
カプセルをぶち破って あなたのお父さんが出てくる。
あなたのお父さんは赤ちゃんだった。
あなたの鳥肌が あなたを置いてけぼりにして どこかへ飛んでいった。
あなたの脇から脇腹にかけてハート型の汗が流れ落ちる。
アヒルが ぬるま湯に飛び込んで来て あなたのお父さんにキスをする。
あなたのお父さんは少し大きくなった。
「アヒルにキスされると お父さんは一歳年を取るのさ」
そう言い残して、あなたのお母さんは猛スピードで靴を履いて家を出て行った。
アヒルも どこかへ行っちゃった。
あなたは多分、一日に五回くらいは心臓発作で死にそうになるんだ。
どうしようもなさが徹底的に繰り広げられる。
「少し恐いけど、気持ちいいなあ」
あなたは強がった性格で、いつも笑ってはいるが心で泣いている。
心が泣けば泣くほど、心臓発作が最高に美しい。
あなたは懸命に一歳のお父さんを育てて暮らしている。
あなたは懸命にお母さんの顔を思い浮かべた。
お母さんの鼻の穴が白く光っていた。単純明快だ。そもそも防御は不可能だった。
お母さんは穴だった。心ひかれる穴。よし、穴を通り抜けよう。あなたは想う。
狂気の目をして、自転車をこいで、穴を駆け抜ける。穴を抜け出したら また人間だ。
嘘偽りのない狂気だ。嘘偽りのない狂気が人間だ。
どれほど過酷な状況でも、人を思いやることができるという狂気だ。
あなたは嘘偽りのない狂気を求めて ここへやって来たんだよ。
おめでとう、今ここは新しいページ。