生きるのを手伝ってください/生きるのを手伝わせてください
今日も世界が移動している。
今日も宇宙が移動している。
お母さんが海辺にいて、
水しぶきと打ちとけた感じで、柔軟体操をしている。
お父さんは赤ちゃんを抱いて、涙を流していた。
お父さんの涙は重力のことを思い出させる。
赤ちゃんが生まれて初めて意識した重力だった。
赤ちゃんは満面の笑みで、お父さんの涙を見ていた。
勝ち誇るかのような力強さで、おばあちゃんは波乗りをしていた。
おじいちゃんは大好きな「恋の歌」を聴いていた。
「お父さん お母さん、お風呂に入れてくれて ありがとう。
これは僕たちの恋の歌」
「お父さん お母さん、わたしたちの お尻についた うんこをふいてくれて
ありがとう。これは わたしたちの恋の歌」
「お父さん お母さん、話しかけてくれて ありがとう。抱きしめてくれて
ありがとう。これは僕たちの恋の歌」
「お父さん お母さん、見守ってくれて ありがとう。これは わたしたちの恋の歌」
おじいちゃんは赤ちゃんを抱いて、
波乗りをしている おばあちゃんを見つめていた。
おじいちゃんの瞳の中で、
おばあちゃんは大きなサーフボードに乗って曲線を描いている。
七色の水しぶきを上げて、おじいちゃんの瞳の中で、大きな曲線を描いている。