パワフルな真実
すべての笑い声には破壊力があって、
すべての破壊力には
気持ちのいい破壊力と気持ち悪い破壊力があって、
気持ちのいい破壊力に、わたしは打ちのめされる。
あなたと露天風呂で月を見ていて、
わたしは気持ちいい破壊力のことを思い出してしまう。
その時、わたしは ときめいて、ときめきのなかで ほろびているのだ。
気持ちのいい破壊力には うめき声が隠れていて、
すさまじい うめき声に、わたしは打ちのめされる。
友だちのようにやってくる うめき声だ。
必死で分かり合おうとしてくる うめき声だ。地響きに感動する うめき声だ。
すりきれた うめき声だ。胸を張る うめき声だ。
発狂寸前のクリームパンと冷えたビールと防弾ジャケットを突破して、
露天風呂が二つに裂けるほど わたしは叫ぶのだ。
根拠は全くないのだけど、おたけびの後の静寂は素晴らしい。
飢え死にした人や蒸し暑い部屋や きんぴらごぼうや清涼飲料水を突破して、
わたしの唾液が、あなたの唾液を追い回している。
あなたは わたしの唾液を指でつまんでゴミ箱に捨てるのだ。
わたしの唾液はゴミ箱のなかで 笑い声を上げている。
のろのろとゴミ箱を よじ上る笑い声、それが正真正銘の人間の姿なのだ。