辺口芳典 Yoshinori Henguchi

  • Home
  • Statement
  • Bio
  • Product
  • Poetry
  • Photo
  • Contact

窓からやわらかい風が吹き込んでくる

母親は“ただの夜”みたいに横たわっていた。
父親は野うさぎを追って、
思うぞんぶん躍動感を味わっている。
父親は“野性の苺”に似た目つきをしていた。
全身の神経から刈りたての芝生の匂いを発散させて、
父親は月明かりの後片づけをしたんだ。
野うさぎは不安げに、全くの暗闇を見上げている。
「たいした成果ではないけど、
これだって立派な成果には違いない」
母親は“ただの夜”みたいな声で、そう言った。

← →
copyright © 2014 Yoshinori Henguchi All rights reserved