マイクテスト
けだるいほどに軽快な人影が
化粧の濃い女とからみ合ったり、
注目して見れば、
それは見覚えのある弱肉強食の物語だった。
人影が過ぎ去って、あっという間に、
喰われた女の残骸が母になった。
嘘偽りのないあきらめが母の体から
にじみ出てくるのを感じた。
笑えるほどマヌケなやつだと思ったから、
「あんたの姿は笑えるほどマヌケだよ」と
私は母に向かって そう言った。
「お前は悪人だよ」と
マイクを持った母はエコーをかけて言った。
「悪人は目をそらさないし、破滅もしない」
そう言って母は エコーをかけて本気で笑っていた。