母親は“ただの夜”みたいに横たわっていた。 父親は野うさぎを追って、 思うぞんぶん躍動感を味わっている。 父親は“野性の苺”に似た目つきをしていた。 全身の神経から刈りたての芝生の匂いを発散させて、 父親は月明かりの後片づけをしたんだ。 野うさぎは不安げに、全くの暗闇を見上げている。 「たいした成果ではないけど、 これだって立派な成果には違いない」 母親は“ただの夜”みたいな声で、そう言った。