人間は安っぽい
子どもは大人より多くの神経細胞を持つ。
「人間は安っぽい」子どもは そう言った。
数学、科学、歴史、運動から学べることは何もない。
実験と実践から学べることは何もない。
それが ありのままの子ども。
がっかりして、がっかりを引きずって生きていく。
それが ありのままの大人。
「あの人も あそこにいたんだ」
女は大事なものを見つけたみたいに そう言った。
自由な雰囲気。捨てたくても捨てようがない気持ち。
忌まわしいものを恐れないバランス感覚。
なんでもありの自分を自分で制限することが自由の基本。
「バイクこそが 彼女の人生だった」
男は自分の肉体を削り取るように差し出すように そう言った。
「散々 事故を起こして体中にボルトが入っているけど、
彼女は開かれた社交場のような屈託のない笑顔だった」男は そう言った。
「私たちは自分勝手で思いやりがなく、他人を見下すことで生き延びてきたよ」
子どもは そう言った。
「私たちは傷つけ合うことでしか自分の声を伝えられなかった」と大人は そう言った。
「私は あの人が好きだ」と女は言った。「私は あなたの笑顔が好きだ」と男は言った。
「人間は安っぽい」「だから どうした」「傷跡があるだけ」
「炎が私たちの傷跡を えぐり取るだけ」「今ここは、私たちの目指した場所」
「それだけ」